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(書誌+要約+請求の範囲)
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開平7−120439
(43)【公開日】平成7年(1995)5月12日
(54)【発明の名称】超音波探傷装置
(51)【国際特許分類第6版】
G01N 29/04 502
29/10 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願平5−268513
(22)【出願日】平成5年(1993)10月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号
(71)【出願人】
【識別番号】000235532
【氏名又は名称】非破壊検査株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市北区西天満2丁目10番2号
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 富徳
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英夫
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】藪下 秀記
【住所又は居所】大阪府大阪市西区北堀江1丁目18番14号 非破壊検査株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】江藤 芳丸
【住所又は居所】大阪府大阪市西区北堀江1丁目18番14号 非破壊検査株式会社内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修
(57)【要約】
【目的】 異なった板厚を有する薄板のステンレス鋼の検査にも適応でき、不感帯がなく、高いS/N比を確保できる超音波探傷装置を得る。
【構成】 超音波探傷装置を、探触子本体11と、探触子本体11に傾斜して取付られ、且つ予め定める一定の屈折角で探傷すべき材料10中に超音波を送信する発信素子12と、探傷すべき材料の内外表面間を屈折角で全反射して伝播する超音波を受信できる間隔だけ、送信方向と反対側に発信素子12から離して、探触子本体に発信素子12と同一傾斜角で位置される受信素子13とを備えて構成し、受信素子13を発信素子12に対して離間・近接自在に構成するとともに、探傷すべき材料10の板厚に対応して、受信素子13の発信素子12に対する離間位置を指定する指定位置表示部材11cを備えて構成したり、両素子を集束型のものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 探触子本体(11)と、前記探触子本体(11)に傾斜して取付られ、且つ予め定める一定の屈折角で探傷すべき材料(10)中に超音波を送信する発信素子(12)と、探傷すべき材料の内外表面間を前記屈折角で全反射して伝播する超音波を受信できる間隔だけ、送信方向と反対側に前記発信素子(12)から離して、前記探触子本体に前記発信素子(12)と同一傾斜角で位置される受信素子(13)とを備えた超音波探傷装置であって、前記受信素子(13)を前記発信素子(12)に対して離間・近接自在に構成するとともに、前記探傷すべき材料(10)の板厚に対応して、前記受信素子(13)の前記発信素子(12)に対する離間位置を指定する指定位置表示部材(11c)を備えた超音波探傷装置。
【請求項2】 探触子本体(11)と、前記探触子本体(11)に傾斜して取付られ、且つ予め定める一定の屈折角で探傷すべき材料(10)中に超音波を送信する発信素子と、探傷すべき材料の内外表面間を前記屈折角で全反射して伝播する超音波を受信できる間隔だけ、送信方向と反対側に前記発信素子から離して、前記探触子本体に前記発信素子と同一傾斜角で位置される受信素子とを備えた超音波探傷装置であって、前記超音波が材料表面間を単一回、全反射して前記探触子本体当接側の面に到達する位置を探傷すべき欠陥が存在すると想定される仮想欠陥位置として設定し、前記発信素子(120)及び前記受信素子(130)が、送信もしくは受信する前記超音波が前記仮想欠陥位置に集束する集束型の発振素子もしくは受信素子として構成される超音波探傷装置。
【請求項3】 特定の板厚に対して、前記超音波が材料表面間を単一回、全反射して前記探触子本体当接側の材料表面に到達する位置を、探傷すべき欠陥が存在すると想定される仮想欠陥位置として設定し、前記発信素子及び前記受信素子が、送信もしくは受信する前記超音波が前記仮想欠陥位置に集束する集束型の発振素子もしくは受信素子として構成される請求項1記載の超音波探傷装置。
詳細な説明
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、探傷対象の材料内に超音波を送信する発信素子と材料内から反射してくる超音波を受信する受信素子とを使用して、受波の状態より材料に存在する欠陥を検出する超音波探傷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】以下、検査対象の欠陥としてのオーステナイト系ステンレス材を使用した板材や配管等の溶接近傍の外表面検査を例にとって説明する。このような材料の溶接近傍の表面には所謂応力腐食割れが発生する。この応力腐食割れは0.2〜0.3mm程度の深さで材料表面で、例えば溶接線に沿って発生する割れであり、塩分、熱応力等により経時的に発生する。さて、従来、このような応力腐食割れの検査にあたっては、浸透探傷法が採用されていた。作業にあたっては、検査対象の材料表面の塗装を除去するとともに、浸透液を塗布し、その分布状況等により欠陥の有無を確認していた。そして、この確認作業の後に、前記浸透液を洗浄するとともに塗装を再度施す必要があった。即ち、この方法を採用する場合は、作業能率が比較的悪く、検査結果も作業者の経験、判断基準に大きく依存していた。一方、材料内等に存在する欠陥を検出する方法として超音波探傷法が用いられる。この方法においては、材料中に超音波を送信し、割れなどの欠陥部分において反射される超音波を受信して、その反射状況から割れの位置、大きさ等に関する情報が得られる。
【0003】図4(イ)、(ロ)に、従来からの超音波探傷法である一探触子法の探傷構成が示されている。(イ)は側面視図を、(ロ)は平面視図を示している。この方法を探触子の構成とともに説明する。尚、別途図5(イ)、(ロ)に説明する発信・受信素子分離タイプのものにおいても、その探触子の内部構成は概略同一である。さて、図4(イ)、(ロ)に示すように、ガス管等の材料1の表面付近には、割れ2が存在する。検査にあっては、割れ2に対して一定の距離を有する位置に探触子3が配置されて、割れ2の検出が行われる。探触子3には、振動子4がくさび5によって傾斜して取付けられる。くさび5中を、ビーム中心6で示すように超音波が進行し、材料1中に入射する時点で屈折角θ1を有するように屈折する。屈折角θ1を有するように屈折した超音波ビームは、材料1の他方表面で全反射し、割れ2に達する。割れ2に到達した超音波は、反対方向に反射され、振動子4に戻る。したがって、この方法では振動子4を一定時間だけ振動させた後で、振動子4からの超音波の発信を停止し、反射してくる超音波の振動を、同一の振動子4によって受信する。振動子4は電圧効果や磁歪効果によって、外部から与えられる電気エネルギを超音波エネルギに変換し、また超音波エネルギを電気エネルギに変換する。振動子4へのエネルギの供給または振動子4からの受信情報は、リード線7を介して探傷ケーブル8に与えられる。探触子3のケースとくさび5との間には、吸音材9が充填される。
【0004】この一探触子法においては、単一の振動子4が、超音波の発信・受信の用に供され、超音波の送信が終了すると直ちに受信に切換えられる。しかしながら、機械的な振動状態が減衰するまでに時間を要し、一定の時刻まではかなり大きな振動が残る。従って、受信を開始できる時間(超音波が一定の距離を伝達されている必要がある)に一定の限界がある。
【0005】さらに、最近提案されているものとして、発振素子としての振動子30aと受信素子としての振動子30bとを検査対象の部位(欠陥の仮想位置)に対して前後方向に離間する異なった位置に備えた探触子がある。図5(イ)(ロ)に夫々、この探触子の側面図と平面図とが示されている。この探触子においては、発振素子30aから発信された超音波は、所定の経路を経て割れ2に到達するとともに、これにより反射され、発信素子30aにおける入射位置において、再度反射されて受信素子30bにいたって検出される。そして、これらの超音波探傷装置においては、発振、受信素子としては超音波を平面的に照射するもの(フラット型と呼ばれるもの)が採用されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述のようなオーステナイト系ステンレス材を使用した板材や配管等の溶接近傍の外表面検査の場合は、浸透探傷法が採用されており、一般に超音波探傷法は採用されていない。この理由は、ステンレス材による超音波の散逸がおおきく感度よく検出ができないためである。さらに、超音波探傷法を採用しようとする場合においても、板厚が小さい場合は、一探触子法では不感帯の存在により充分な検査がおこなえない。一方、発信素子と受信素子を独立に前後方向に備えたものにおいては、これに対応する発信素子と受信素子の位置が固定されることで、結果的に検査対象となる材料の板厚が限定され、充分な検査をおこなうことができないという問題がある。さらに、発信素子と受信素子を独立に前後方向に備えたものにおいても、オーステナイト系ステンレス材を使用した板材や配管等の溶接近傍の外表面検査の場合は、その超音波の散逸が大きいため、S/N比の大きい確実な検査が行いにくいという問題があった。
【0007】そこで、本発明の目的は、例えばステンレス材の応力腐食割れに対しても、簡単な構成で、不感帯なく、高いS/N比を確保できる超音波探傷装置を得るとともに、検査対象の材料の板厚の変化にも対応できる超音波探傷装置を得ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に於ける超音波探傷装置の本願第1の発明の特徴構成は、探触子本体と、探触子本体に傾斜して取付られ、且つ予め定める一定の屈折角で探傷すべき材料中に超音波を送信する発信素子と、探傷すべき材料の内外表面間を屈折角で全反射して伝播する超音波を受信できる間隔だけ、送信方向と反対側に発信素子から離して、探触子本体に発信素子と同一傾斜角で位置される受信素子とを備えた超音波探傷装置において、受信素子を発信素子に対して離間・近接自在に構成するとともに、探傷すべき材料の板厚に対応して、受信素子の発信素子に対する離間位置を指定する指定位置表示部材を備えたことにある。さらに、超音波探傷装置の本願第2の発明の特徴構成は、探触子本体と、探触子本体に傾斜して取付られ、且つ予め定める一定の屈折角で探傷すべき材料中に超音波を送信する発信素子と、探傷すべき材料の内外表面間を屈折角で全反射して伝播する超音波を受信できる間隔だけ、送信方向と反対側に発信素子から離して、探触子本体に発信素子と同一傾斜角で位置される受信素子とを備えた超音波探傷装置において、超音波が材料表面間を単一回、全反射して探触子本体当接側の面に到達する位置を、探傷すべき欠陥が存在すると想定される仮想欠陥位置として設定し、発信素子及び受信素子が送信もしくは受信する超音波が仮想欠陥位置に集束する集束型の発振素子もしくは受信素子として構成されることにある。そして、それらの作用・効果は以下のとおりである。
【0009】
【作用】第1の発明の超音波探傷装置においては、これに備えられる発信素子と受信素子は個別配置構成とされ(ただし、単一の探触子本体に組み付られている)、これらの素子の側面視での傾斜角(材料表面の法線に対する傾き)は一定で、夫々同一とされる。使用に当たっては、発信素子から発信された超音波は、所定の送信経路を経て仮想欠陥位置に到達するとともに、欠陥がある場合は、この部位から反射されて、前述の送信経路と同一の経路を逆方向に辿る受信経路及び再度の全反射経路を経て、受信素子に至ることとなる。ここで、この装置においては、材料の板厚に応じて指定位置表示部材の指定に従って、発信素子と受信素子の位置が作業者によって設定されて探傷がおこなわれる。従って、超音波が材料内に入射する位置と、これから出射する位置との離間位置関係は、材料の板厚と屈折角との関係から、指定位置表示部材によって決定され、超音波の板状材料内での全反射状態を満たすものとされる。この要件から、前述の仮想的な欠陥の位置から全反射状態で反射してくる超音波が主に、受信素子に到達することとなる。即ち受信素子の傾斜角関係、及び平面的な両素子の位置関係より、異なった角度で進行する超音波は、受信素子に到達しにくい。よって、雑音は非常に少なくなる。さらに、本願の超音波探傷装置においては、発信素子と受信素子とが分離しているので、受信素子には不感帯はほとんど生じない。よって、雑音の少ない状態で且つ強い信号強度で、欠陥に係わる所定の信号を良好に検出することができる。一方、本願第2の発明の超音波探傷装置においては、超音波の送信もしくは受信方向に対して、その前後方向に両素子を配設する構成で、材料表裏表面間を1スキップのみ全反射して伝播する位置(この位置を仮想欠陥位置と呼ぶ)にある欠陥を検出対象として特定し、この位置に両素子からの超音波が集束される(発信素子の場合は、前述の仮想欠陥位置に発信超音波が集束するものとされ、受信素子の場合は、検知される超音波の音源側が前述の仮想欠陥位置とされる)。従って、後述する実験結果にも示すように、特定位置に対する検出を優先的におこなうこととなるため、フラットタイプのものを採用する場合と比較して、S/N比を格段に高くなる。
【0010】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、不感帯をほとんど生じることなく、しかも高いS/N比で割れなどの欠陥の検出を行うことができる。S/N比が高いので、例えば、探傷すべき材料の表面に塗装膜が施されていても欠陥の検出が可能となる。従って、実際に使用中の管材などでは、応力腐食割れを防止するために塗装を施しているけれども、欠陥の検出を塗装の剥離をすることなく行える。さらに、第1の発明の構成においては、検査対象となる材料の板厚が変化した場合においても、指定位置表示部材に存する指標に従って各素子を位置させることにより、容易に作業を進めることができる。一方、第2の発明の構成においては、後述する実験結果に示すように、感度が格段に良化した状態で検出をおこなうことができる。ここで、溶接部周辺に発生する応力腐食割れの検査において、浸透探傷法を採用する場合と、本願の装置を利用して超音波探傷法とをおこなう場合との作業工数の比較をおこなうと、検査箇所が50箇所ある事業所において、前者の場合は作業日数5〜6日で20名、後者の場合は作業日数2日で4〜5名となり、大幅な省力化が達成される。
【0011】
【実施例】図1(イ)は、本発明の一実施例による超音波探傷装置の断面図がさらに図1(ロ)には使用状態の平面視図が示されている。
【0012】探傷にあたっては、管材や板材などの材料10の表面に、探触子本体11の下面が接触されて使用される。この探触子本体11は、発信素子である発信用の振動子12と、受信素子である受信用の振動子13を備えて構成されている。図示するように探触子本体11は、検査対象の溶接部位の近接側に備えられて使用される第一探触子本体11aと、この第一探触子本体に対して近接・離間自在かつ位置固定自在に構成された第二探触子本体11bを備えて構成されている。そして、第一探触子本体11aには発信素子12が、さらに第二探触子本体11bには受信素子13が備えられて構成されている。さらに、この第二探触子本体11bは、第一探触子本体11aの後部側に設けられるノギス11c上を移動自在で、位置固定自在な構成が採用されている。そして、このノギス11cには検査対象の材料の板厚に対応して第二探触子本体11bが捕るべき位置が刻印されており、指定位置表示部材として構成されている。この、第一探触子本体11aと第二探触子本体11bとの位置関係(ひいては発信素子12と受信素子13との離間距離関係)については後述する。
【0013】以下さらに、詳細に説明すると、発信用・受信用の振動子12、13は、夫々各探触子本体11a,11b内でくさび14、15に取付けられて構成される。振動子12,13はダンパ16,17によってそれぞれ制動される。各探触子本体11a、11b内の空間には吸音材18が充填される。
【0014】ここで、振動子12,13は、ほぼ同一形状で、同一共振周波数、たとえば5MHzを有する。振動子12,13の材料としては、たとえばチタン酸バリウムなどの磁器材料が用いられる。くさび14,15も同一形状であり、材料としてはアクリル樹脂などが用いられる。くさび14,15は、材料10中で超音波が屈折角θ、たとえば45°を有するように、振動子12,13を傾斜して保持する。ダンパ16,17は、布入りのフェノール樹脂などが用いられ、各振動子12,13の余分な振動を防止する。吸音材18は、空気を介して超音波が伝搬するのを防止する。以上のように、振動子12,13に関連する構造はほぼ同一であるので、超音波探傷装置の製造は容易で、コストダウンが可能である。
【0015】さて、使用にあたっては、前述の第一探触子本体11aと第二探触子本体11bとの位置関係をノギス11cの刻印に従って、検査対象となる材料の板厚に従って設定することにより、特定の位置関係とされる。即ち、超音波の材料内への入射位置20と材料内からの出射位置21とが、所定の屈折角θで入射される超音波が、板状材料の内外表面S2,S1(材料表面を単にSで表す)間を前記屈折角θで全反射して伝搬する距離だけ離間して設定されることとなる(図1(イ)参照)。一般には、この設定位置関係(離間距離をLとする)は、超音波の屈折角θを検査対象の板状材料の板厚tを、以下の式が成立する。
L=n×2t×tan(θ)
ここで、n=1、2、3……【0016】さて、材料中に存在する割れ200などの欠陥は、表示器25による表示によって検出される。この検出を行うために、発信器26から5MHzの信号出力が送信用の振動子12に与えられる。表示器25および発信器26は、探傷器27に含まれる。
【0017】以下に検出状況について説明する。これまで説明してきたように、作業にあたって、作業者は先ず材料の板厚に従って第一探触子本体11aと第二探触子本体11bの離間距離を設定するとともに、第二探触子本体11bを位置固定して、検査対象の材料に当接させる。そして、装置を始動させる。発信用の振動子12から発信された超音波は、くさび14中を進み、材料10の表面で入射点20に達する。材料10中では、屈折角θとなるように屈折して、入射点20側の表面と対向する側の表面の反射点31aに達する。反射点31aでは、表面が空気と接触しており、空気中の音速はくさび14,15中の音速よりも小さいので、材料10中の音速との差が大きく、超音波は反射点31aで全反射され、割れ200の反射点32に達する。反射点32では、超音波の進行方向が変化され、反射点31aを経て入射点20に至とともに、再度全反射して出射点21に至る。出射点21では、到達した超音波の一部がくさび15中に侵入し、受信用の振動子13に到達する。入射点20と出射点21との伝達経路に沿った距離は、往路側が超音波が屈折角θで1回全反射して到達する1スキップの距離、復路はその倍の距離である。この距離は、たとえば屈折角θが45°のときには、板厚tの2倍となる。割れ200までの距離は、材料10中の音速と屈折角θによって求めることができる。割れ200が検出されたかどうかは、その距離だけ離れた表面を押さえるなどして、表示器25の表示が変化するか否かで判断することができる。
【0018】この探触子本体11に取付けられる、発信素子12と受信素子13との間隔は、上述のように1スキップに選ぶのが望ましいけれども、板厚tが薄いときには、1スキップの整数倍、たとえば3スキップ程度であっても差支えないことが、実験結果により確認されている。
【0019】さて、以上に述べてきた超音波探傷装置の開発の主眼は、検査対象の材料の板厚の変化に対するものであるが、こういった要請とともに、装置が頻繁に検査対象とする材料の板厚が、特定される場合もある。そして、このような場合は、板厚の変化に対する対応とともに、いかにS/N比を向上させて検出するかが問題となる。このような目的の超音波探傷装置100を図2に示す。装置の概略構成は図1に示すものと同一であるが、この装置に備えられる振動子120,130は、その発信または受信する超音波が所定の仮想欠陥位置に集束するものとして構成されている。即ち、特定の板厚に対して、発信もしくは受信する超音波が、材料表面間を単一回、全反射して探触子本体当接側の材料表面に到達する位置に、探傷すべき欠陥が存在すると想定され、振動子120、130が、送信もしくは受信する超音波が前記仮想欠陥位置に集束する。この構成の装置100の検討結果については後述する。ここで、素子を集束型に構成することと、板厚の変化に対応することとは矛盾する課題のようにみえるが、集束型の素子で、ある程度の板厚の変化にも対応できる。
【0020】以下、本願の超音波探傷装置の有用性の検証実験結果について説明する。検証実験の要件を箇条書きする。
1 検査用使用機器及び被検体a 使用探傷器 デジタル超音波探傷器 EPOCK II(パナメトリクス社)
b 検討対象探触子(上述の説明で超音波探傷装置と呼んでいるもの)
一探触子法 斜角探触子(図4に示すもの)
一探触子法 集束型斜角探触子(図4に示す構成のもので、集束型のもの)
二探触子法 前後配列フラット型探触子(図5に示すもの)
二探触子法 前後配列集束型探触子(図2に示す構成のもので、集束型のもの)
c 接触媒質グリセリンd 被検体被検体 1石炭ガス(CG)ファールメーン本管φ600内面の応力腐食割れ(SCC)(材質SS−41 板厚 4.2t)
被検体 2図3に示すφ200配管50に於ける2Bノズル51取付け溶接部52の外表面応力腐食割れ(SCC)53(材質 SUS304 板厚 3.8t)
この割れ53は、図示するように2Bノズル51取付け溶接部52から配管50の周方向に発生している割れであり、図3(イ)に示すように、割れ53に対して直角方向に探触子(超音波探傷装置)を当てて検査をおこなった。割れ53は溶接部52から配管周方向に長さ16mmに亘って発生しており、ノズル51から離間する側の2mm程度を除いて厚み方向で両表面間に亘って貫通している。検査に当たっては、ノズル51から離間した端部位置Aで厚み方向1mm深さの部位の検知をおこう。
【0021】2 探傷条件測定範囲………50mm探傷感度………被検体と同材質・板厚の縦穴φ2.4mmをエコー高さ80%に設定被検体表面……塗装無し3 探傷結果以下に探傷結果について説明する。
3−1 結果 1被検体1に対する感度測定結果を表1に示す。この被検体に存在する各欠陥は以下のようなものであった。
欠陥長さ:A=18mm,B=9mm,c=5mm欠陥深さ:0.5〜1.2mm【0022】
【表1】
【0023】3−2 結果 2被検体2に対する感度測定結果を表2に示す。この被検体に存在する各欠陥は以下のようなものであった。
欠陥長さ:A=16mm欠陥深さ:0〜3.8mm(貫通欠陥)
探傷感度:2Bφ2.4からのエコーをCRT80%に調整した。
【0024】
【表2】
【0025】以上の結果を整理して、各方法により得られる感度状態を表3に示す。この表において、SS−41で示すものが被検体1に関する結果であり、SUS304で示すものが被検体2に関する結果である。
【0026】
【表3】
【0027】上記のような結果より、超音波探傷法による検出性能評価は、探傷器27のCRT表示の欠陥信号高さとノイズ高さとの比(S/N)で行うが、集束型前後配列構成ののものを使用する場合が、従来法であるフラット型一探触子(汎用)を使用した場合のS/Nに対して、SS材で2.4倍、SUS材で5.3倍の高検出性が得られた。尚、この実験データは塗装無しであるが、S/Nが約14〜15あることから、塗装施工後についても十分検出性能が有ることが立証された。
【0028】尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。 |
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