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塩素化有機化合物の採取器および塩素化有機化合物の採取用フィルター
(書誌+要約+請求の範囲)
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2000−338012(P2000−338012A)
(43)【公開日】平成12年12月8日(2000.12.8)
(54)【発明の名称】塩素化有機化合物の採取器および塩素化有機化合物の採取用フイルター
(51)【国際特許分類第7版】
G01N 1/02
B01D 53/04
G01N 1/10
1/22
【FI】
G01N 1/02 D
B01D 53/04 C
G01N 1/10 C
1/22 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願平11−149588
(22)【出願日】平成11年5月28日(1999.5.28)
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
【住所又は居所】愛媛県松山市堀江町7番地
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号
(72)【発明者】
【氏名】本田 克久
【住所又は居所】愛媛県松山市堀江町7番地 三浦工業株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼田 典明
【住所又は居所】愛媛県松山市堀江町7番地 三浦工業株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】山下 正純
【住所又は居所】愛媛県松山市堀江町7番地 三浦工業株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】中村 裕史
【住所又は居所】愛媛県松山市堀江町7番地 三浦工業株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】梶川 修
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】畑田 衛
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】藤田 進
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】松元 敦実
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 富徳
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(74)【代理人】
【識別番号】100099841
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 恒彦
【テーマコード(参考)】
4D012
【Fターム(参考)】
4D012 CA12 CA20 CB07 CB10 CE01 CE03 CF10 CG01 CG04 CG10 CH01 CH10 CJ05 CK05 CK07 CK10
(57)【要約】
【課題】 流体中に含まれる粒子状態及びガス状態の塩素化有機化合物を同時に捕捉して採取することができる採取器を実現する。
【解決手段】 採取器3は、一端が閉鎖されかつ他端に開口部7aを有する筒状の多孔質の採取用フイルター7と、その開口部7aに対して着脱可能でありかつ流体を採取用フイルター7内に導入するための導入管8と、採取用フイルター7を被覆しかつ採取用フイルター7を通過する流体を外部に排出するための排出路12aを有するホルダー6とを備えている。採取用フイルター7は、平均繊維径が10μm以下の極細炭素系繊維を含みかつ空隙率が80%以上100%未満に設定された成形体からなる。導入管8を経由して送られて来た気体試料は、それに含まれる粒子状態およびガス状態の塩素化有機化合物が採取用フイルター7において同時に採取されて取り除かれた後、排出路12aから外部に排出される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】流体中に含まれる塩素化有機化合物を採取するための採取器であって、前記塩素化有機化合物を捕捉して前記流体から取り除くための多孔質のフイルターと、前記流体を前記フイルター内に導入するための導入管と、前記フイルターを被覆しかつ前記フイルターを通過する前記流体を外部に排出するための排出路を有する被覆体とを備え、前記フイルターは、平均繊維径が10μm以下の極細炭素系繊維を含みかつ空隙率が80%以上100%未満に設定された成形体からなる、塩素化有機化合物の採取器。
【請求項2】前記極細炭素系繊維の比表面積が1〜2,000m2/gである、請求項1に記載の塩素化有機化合物の採取器。
【請求項3】前記フイルターは、前記極細炭素系繊維を0.01〜3.0g含んでいる、請求項1または2に記載の塩素化有機化合物の採取器。
【請求項4】前記フイルターは、前記極細炭素系繊維以外の他の炭素材をさらに含んでいる、請求項1に記載の塩素化有機化合物の採取器。
【請求項5】前記極細炭素系繊維と前記炭素材との平均比表面積が1〜2,000m2/gである、請求項4に記載の塩素化有機化合物の採取器。
【請求項6】前記フイルターは、前記極細炭素系繊維と前記炭素材とを合計で0.01〜3.0g含んでいる、請求項4または5に記載の塩素化有機化合物の採取器。
【請求項7】流体中に含まれる塩素化有機化合物を採取するための採取器であって、前記塩素化有機化合物を捕捉して前記流体から取り除くための多孔質のフイルターと、前記流体を前記フイルター内に導入するための導入管と、前記フイルターを被覆しかつ前記フイルターを通過する前記流体を外部に排出するための排出路を有する被覆体とを備え、前記フイルターは、炭素材と、平均繊維径が10μm以下の極細繊維とを含みかつ空隙率が80%以上100%未満に設定された成形体からなる、塩素化有機化合物の採取器。
【請求項8】前記炭素材は、比表面積が1〜2,000m2/gである、請求項7に記載の塩素化有機化合物の採取器。
【請求項9】前記フイルターは、前記炭素材を0.01〜3.0g含んでいる、請求項7または8に記載の塩素化有機化合物の採取器。
【請求項10】前記極細繊維は、ガラス繊維、シリカ繊維およびセルロース繊維からなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項7、8または9に記載の塩素化有機化合物の採取器。
【請求項11】流体中に含まれる塩素化有機化合物を前記流体から取り除いて採取するためのフイルターであって、平均繊維径が10μm以下の極細炭素系繊維を含みかつ空隙率が80%以上100%未満に設定された多孔質の成形体からなる塩素化有機化合物の採取用フイルター。
【請求項12】前記極細炭素系繊維の比表面積が1〜2,000m2/gである、請求項11に記載の塩素化有機化合物の採取用フイルター。
【請求項13】前記極細炭素系繊維を0.01〜3.0g含んでいる、請求項11または12に記載の塩素化有機化合物の採取用フイルター。
【請求項14】前記極細炭素系繊維以外の他の炭素材をさらに含んでいる、請求項11に記載の塩素化有機化合物の採取用フイルター。
【請求項15】前記極細炭素系繊維と前記炭素材との平均比表面積が1〜2,000m2/gである、請求項14に記載の塩素化有機化合物の採取用フイルター。
【請求項16】前記極細炭素系繊維と前記炭素材とを合計で0.01〜3.0g含んでいる、請求項14または15に記載の塩素化有機化合物の採取用フイルター。
【請求項17】流体中に含まれる塩素化有機化合物を前記流体から取り除いて採取するためのフイルターであって、炭素材と平均繊維径が10μm以下の極細繊維とを含みかつ空隙率が80%以上100%未満に設定された多孔質の成形体からなる塩素化有機化合物の採取用フイルター。
【請求項18】前記炭素材は、比表面積が1〜2,000m2/gである、請求項17に記載の塩素化有機化合物の採取用フイルター。
【請求項19】前記炭素材を0.01〜3.0g含んでいる、請求項17または18に記載の塩素化有機化合物の採取用フイルター。
詳細な説明
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、塩素化有機化合物の採取器および採取用フイルター、特に、流体中に含まれる塩素化有機化合物を採取するための採取器および採取用フイルターに関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】産業廃棄物や一般家庭ごみなどの廃棄物を焼却処理するための焼却施設から発生する排気ガス中には、ダイオキシン類、ポリクロロビフェニル(PCB)、クロロフェノール、クロロベンゼンなどの塩素化有機化合物が含まれている。
【0003】ここで、ダイオキシン類は、ポリ塩化ジベンゾ・パラ・ダイオキシン類(PCDDs)やポリ塩化ジベンゾフラン類(PCDFs)等の総称であり、周知の如く極めて毒性の強い環境汚染物質であるが、その中でも四塩化ジベンゾダイオキシン(T4CDDs)は特に最強の毒性物質として知られている。一方、ポリクロロビフェニル、クロロフェノール、クロロベンゼンなどの塩素化有機化合物は、ダイオキシン類に比べて毒性は弱いが、一定の条件下、例えば、焼却炉内でフライアッシュ中の種々の元素を触媒として排気ガスの温度範囲でダイオキシン類に変化しやすいことが判明しているため、ダイオキシン類と同様に環境汚染物質として認識されている。このため、環境保全の観点から、上述のような各種の塩素化有機化合物を排気ガスや廃水などの流体中から除去するための方策の確立が緊急の課題となっており、同時にこのような流体中に含まれる塩素化有機化合物を分析するための手法の確立が世界的規模で急がれている。
【0004】ところで、流体中に含まれる塩素化有機化合物を分析する際には、先ず、分析対象となる流体から精密かつ正確に試料を入手する必要がある。例えば、排気ガス中に含まれる塩素化有機化合物を分析する場合は、排気ガスを含む空間、例えば排気ガスが流れる煙道から気体試料を一定量採取し、この気体試料中に含まれる各種の塩素化有機化合物を漏れなく確実に捕捉する必要がある。特に、上述のような環境汚染物質であるダイオキシン類は、気体試料中に含まれる量が極めて微量であり、また、粒子状態やガス状態などの各種の形態であって種類も多岐に渡るため、その精密な採取を無くしては信頼性の高い分析結果は期待できない。このため、我国、米国およびヨーロッパの各国は、分析結果の正確性を担保するために、ダイオキシン類をはじめとする塩素化有機化合物試料の採取方法を公的に規定しつつある。
【0005】例えば、我国の厚生省は、公定法を定め、それにおいてダイオキシン類などの塩素化有機化合物を含む気体試料の採取装置を具体的に規定している。この採取装置は、例えば焼却装置の排気ガスが流れる煙道から気体試料を採取するための採取管、採取管により採取された気体試料中に含まれる主に粒子状態の塩素化有機化合物を捕捉するためのフイルター材を備えた第1捕捉器、および第1捕捉器で捕捉されないガス状態の塩素化有機化合物を捕捉するための第2捕捉器を主に備えている。ここで、第2捕捉器は、主に、吸収液を入れた複数のガラス製インピンジャーからなる液体捕集部と樹脂吸着材を備えた樹脂吸着部とからなり、第1捕捉器で捕捉されないガス状態の塩素化有機化合物をインピンジャー内の吸収液と樹脂吸着材とにより捕捉し得るように構成されている。
【0006】このような採取装置は、第1捕捉器と第2捕捉器とを備えた複雑な構成を有し、しかもガラス製器具を多用していることから高価であるため、繰り返して利用する場合が多い。この場合、測定データの信頼性を確保するためにインピンジャーをはじめとする各部材を清浄に保つ必要があるので、気体試料を採取する前の洗浄操作等の準備操作が非常に煩雑になる。また、気体試料中に含まれるガス状態の塩素化有機化合物を第2捕捉器で捕捉する際には、第2捕捉器をドライアイス等の冷却材を用いて冷却する必要があり、試料の採取操作そのものも非常に煩雑になる。さらに、気体試料の採取後においては、第1捕捉器および第2捕捉器により捕捉された塩素化有機化合物を抽出する必要があるが、ここでは第1捕捉器および第2捕捉器に捕捉された塩素化有機化合物をそれぞれ個別に抽出する必要があるため、抽出操作そのものが煩雑であり、また、抽出操作の巧拙により分析結果の信頼性が左右される場合も多い。さらに、この採取装置は、第1捕捉器および第2捕捉器の2種類の捕捉器からなるため必然的に大型化し、しかもガラス器具を多用していることから破損し易いので、気体試料採取時の取扱いや運搬も困難である。
【0007】一方、米国の環境保護庁(EPA)およびヨーロッパ規格委員会(CEN)もそれぞれ独自の公定法を定めているが、そこに示されている採取装置は、上述のような日本のものとは細部において異なるものの、構成の複雑さや取扱の困難性などの点においては大きな変わりはない。
【0008】本発明の目的は、流体中に含まれる粒子状態およびガス状態の塩素化有機化合物を同時に捕捉して採取することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に係る塩素化有機化合物の採取器は、流体中に含まれる塩素化有機化合物を採取するための採取器であって、塩素化有機化合物を捕捉して前記流体から取り除くための多孔質のフイルターと、流体をフイルター内に導入するための導入管と、フイルターを被覆しかつフイルターを通過する流体を外部に排出するための排出路を有する被覆体とを備えている。フイルターは、平均繊維径が10μm以下の極細炭素系繊維を含みかつ空隙率が80%以上100%未満に設定された成形体からなる。
【0010】ここで、フイルターに含まれる極細炭素系繊維の比表面積は、例えば1〜2,000m2/gである。また、フイルターは、極細炭素系繊維を例えば0.01〜3.0g含んでいる。
【0011】一方、この採取器において用いられる他の形態に係るフイルターは、例えば、極細炭素系繊維以外の他の炭素材をさらに含んでいる。この場合、極細炭素系繊維と炭素材との平均比表面積は、例えば1〜2,000m2/gである。また、フイルターは、極細炭素系繊維と炭素材とを合計で例えば0.01〜3.0g含んでいる。
【0012】本発明の他の形態に係る塩素化有機化合物の採取器は、流体中に含まれる塩素化有機化合物を採取するための採取器であり、塩素化有機化合物を捕捉して流体から取り除くための多孔質のフイルターと、流体をフイルター内に導入するための導入管と、フイルターを被覆しかつフイルターを通過する流体を外部に排出するための排出路を有する被覆体とを備えている。フイルターは、炭素材と、平均繊維径が10μm以下の極細繊維とを含みかつ空隙率が80%以上100%未満に設定された成形体からなる、【0013】ここで、フイルターに含まれる炭素材は、例えば、比表面積が1〜2,000m2/gである。また、フイルターは、炭素材を例えば0.01〜3.0g含んでいる。さらに、フイルターに含まれる極細繊維は、例えば、ガラス繊維、シリカ繊維およびセルロース繊維からなる群から選ばれた少なくとも1種である。
【0014】本発明に係る塩素化有機化合物の採取用フイルターは、流体中に含まれる塩素化有機化合物を流体から取り除いて採取するためのものであり、平均繊維径が10μm以下の極細炭素系繊維を含みかつ空隙率が80%以上100%未満に設定された多孔質の成形体からなる。
【0015】ここで、極細炭素系繊維の比表面積は、例えば1〜2,000m2/gである。また、成形体は、極細炭素系繊維を例えば0.01〜3.0g含んでいる。
【0016】一方、この採取用フイルターを構成する他の形態の成形体は、例えば、極細炭素系繊維以外の他の炭素材をさらに含んでいる。この場合、極細炭素系繊維と炭素材との平均比表面積が例えば1〜2,000m2/gである。また、極細炭素系繊維と炭素材とを合計で例えば0.01〜3.0g含んでいる。
【0017】本発明の他の形態に係る塩素化有機化合物の採取用フイルターは、流体中に含まれる塩素化有機化合物を前記流体から取り除いて採取するためのものであり、炭素材と平均繊維径が10μm以下の極細繊維とを含みかつ空隙率が80%以上100%未満に設定された多孔質の成形体からなる。
【0018】ここで、炭素材は、例えば比表面積が1〜2,000m2/gである。また、成形体は、炭素材を例えば0.01〜3.0g含んでいる。
【0019】
【作用】本発明に係る塩素化有機化合物の採取器において、導入管からフイルター内に導入された流体は、フイルターを通過し、さらに被覆体の排出路を通じて外部に排出される。この際、流体中に含まれる塩素化有機化合物は、フイルターにより捕捉され、流体から取り除かれる。ここで、フイルターは、上述のような極細炭素系繊維、または極細炭素系繊維と他の炭素材、または炭素材と極細繊維を含んでいるため、粒子状態とガス状態の両方の塩素化有機化合物を同時に捕捉し、これらを流体中から取り除いて採取することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】図1に、本発明の採取器の一形態が採用された塩素化有機化合物採取装置の概略構成を示す。なお、この採取装置1は、流体のうち、排気ガスなどの気体試料に含まれる塩素化有機化合物を採取するためのものである。図において、採取装置1は、採取管2、採取器3(本発明に係る採取器の実施の一形態)および吸引器4を主に備えている。
【0021】採取管2は、例えばガラス管であり、その内部を通過する気体試料を冷却するための冷却器5を有している。
【0022】図2、図3(図2の縦断面図)および図4(図2のIV−IV断面図)を参照して、採取器3の詳細を説明する。図において、採取器3は、ホルダー(被覆体の一例)6、ホルダー6内に配置された、気体試料中に含まれる塩素化有機化合物を捕捉して採取するための採取用フイルター7(フイルターの一例)、気体試料を採取用フイルター7内に導入するための導入管8および導入管8をホルダー6に対して装着するための装着体9を主に備えている。
【0023】ホルダー6は、透明なガラスからなる概ね円筒状の容器であり、採取用フイルター7を収容可能な本体部10と、装着体9を装着するための装着部11と、気体試料を排出するための排出部12とを有している。装着部11は、本体部10の端部に一体に設けられており、直径が本体部10に比べて縮小されている。この装着部11は、外周面に螺旋溝11aが形成されており、また、端部に開口部11bを有している。
【0024】排出部12は、本体部10の他方の端部に一体に設けられており、気体試料を外部に排出するための排出路12aと分岐路12bとを有している。分岐路12bは、排出部12内を通過する気体試料の温度を測定するための温度計や熱電対などの測温器27を排出部12内に挿入するためのものである。
【0025】採取用フイルター7は、一端が閉鎖されかつ他端に気体試料を導入するための開口部7aを有する円筒状の多孔質の成形体、すなわち多孔質の筒状フイルターであり、開口部7a側が装着体9により支持されつつ、閉鎖端側が開口部11bからホルダー6内に挿入されている。この採取用フイルター7は、通常、長さ50〜150mm、開口部7a側の端部の外径12〜35mm、閉鎖端側の外径10〜30mm、厚さ1〜10mmに設定されており、閉鎖端側の外径が開口部7a側の端部の外径よりも小さく設定されたテーパー形状に形成されている。なお、採取用フイルター7の詳細についてはさらに後述する。
【0026】導入管8は、ホルダー6と同じくガラスからなる管状の部材であり、採取用フイルター7の開口部7aに対して着脱可能である。この導入管8は、一端に採取管2を連結するための連結部13を有しており、また、他端が装着体9を貫通して採取用フイルター7の開口部7a内に着脱可能に挿入されている。
【0027】装着体9は、採取用フイルター7をホルダー6内で支持するための第1支持体14と、導入管8を第1支持体14に対して装着するための第2支持体15とを有している。第1支持体14は、樹脂製または金属製の部材であり、採取用フイルター7の開口部7a側端部を支持するための穴部14aを有している。穴部14aの内周面には、螺旋溝14bが形成されている。第1支持体14は、その螺旋溝14bによりホルダー6の装着部11の螺旋溝11aに螺着されている。また、第1支持体14は、図3の左方向に突出する突出部16を有している。突出部16は、導入管8の先端部を挿入可能な貫通孔16aを有しており、また、外周面に螺旋溝16bが形成されている。
【0028】一方、第2支持体15は、第1支持体14と同じく樹脂製または金属製の部材であって内周面に螺旋溝15aが形成された蓋状に形成されており、導入管8を挿入するための貫通孔15bを有している。この第2支持体15は、貫通孔15bに導入管8が挿入された状態で螺旋溝15aにより第1支持体14の突出部16の螺旋溝16bに螺着されている。
【0029】このような採取器3に装着された採取用フイルター7は、ホルダー6から取り外すことができる。この場合は、装着体9の第2支持体15を第1支持体14から取り外し、導入管8を採取用フイルター7から抜き取る。そして、第1支持体14をホルダー6から取り外すと、採取用フイルター7は第1支持体14により支持されつつホルダー6から取り出される。
【0030】吸引器4は、排気流路20と吸引ポンプ21とを備えている。排気流路20は、一端が管状ジョイント22を用いて採取器3の排出路12aに連結されており、また、採取器3側から順に冷却器23とトラップ24とをこの順に有している。吸引ポンプ21は、排気流路20の他端に取付けられている。
【0031】次に、上述の採取器3において用いられる採取用フイルター7の詳細について説明する。本実施の形態に係る採取器3で利用可能な採取用フイルター7は、概ね次の3形態に分類することができる。以下、形態毎に説明する。
【0032】(第1の形態)この形態の採取用フイルター7は、極細炭素系繊維を含んでいる。ここで用いられる極細炭素系繊維は、平均繊維径が10μm以下(好ましくは7μm以下)、例えば、0.1〜10μm(好ましくは1〜7μm)のものである。この繊維の平均繊維径が10μmを超える場合は、気体試料中に含まれる粒子状態の塩素化有機化合物を捕捉して採取するのが困難になるおそれがある。因みに、この極細炭素系繊維の平均アスペクト比(残存平均アスペクト比)は、通常、10,000以下が好ましい。
【0033】このような極細炭素系繊維は、ポリアクリロニトリル樹脂、フェノール樹脂またはレーヨンなどの合成樹脂、ピッチ若しくはタールなどの公知の各種の炭素前駆体を紡糸した後に焼成して炭素化したもの(炭素繊維)、或いは賦活して活性を持たせたもの(活性炭素繊維)等であり、特に種類が限定されるものではない。また、極細炭素系繊維は、2種以上のものが併用されてもよい。但し、極細炭素系繊維は、比表面積が1〜2,000m2/gのものが好ましく、10〜1,000m2/gのものがより好ましい。比表面積が1m2/g未満の場合は、気体試料中に含まれる塩素化有機化合物(特にガス状態の塩素化有機化合物)が採取用フイルター7に吸着されにくくなり、気体試料中に含まれる塩素化有機化合物を捕捉して気体試料から取り除くことができない場合がある。逆に、比表面積が2,000m2/gを超える場合は、採取用フイルター7に対する塩素化有機化合物の吸着性が強まり過ぎ、後述する分析操作において、採取用フイルター7により捕捉された塩素化有機化合物を短時間で効率的に抽出するのが困難になるおそれがある。
【0034】なお、上述の比表面積は、例えば、常圧下の液体窒素の沸点における吸着側の窒素ガス吸着等温線に基づいて測定する公知の方法(B.E.T−B.J.H.法)に従って求めることができる値である。
【0035】上述のような極細炭素系繊維を含む成形体からなる採取用フイルター7は、空隙率が80%以上100%未満、好ましくは90%以上100%未満に設定されている。空隙率が80%未満の場合は、後述する分析操作において、採取用フイルター7により捕捉された塩素化有機化合物を短時間で効率的に抽出するのが困難になるおそれがある。なお、ここでの空隙率は、採取用フイルター7の嵩密度(g/cm3)と真比重(g/cm3)とから下記の計算式に従って求められる値である。
【0036】
【数1】
【0037】この採取用フイルター7は、上述のような極細炭素系繊維の他に、他の材料を含んでいてもよい。但し、他の材料としては、例えば、ガラス繊維、シリカ繊維、セルロース繊維等の塩素化有機化合物と反応し難い無機質繊維を用いるのが好ましい。
【0038】上述の極細炭素系繊維は、採取用フイルター7において、通常、0.01〜3.0g含まれているのが好ましく、0.1〜3.0g含まれているのがより好ましい。極細炭素系繊維の含有量が0.01g未満の場合は、気体試料中に含まれるガス状態および粒子状態の両方の塩素化有機化合物を同時に捕捉して採取するのが困難になるおそれがある。逆に、3.0gを超える場合は、後述する分析操作において、採取用フイルター7により捕捉された塩素化有機化合物を短時間で効率的に抽出するのが困難になるおそれがある。例えば、採取用フイルター7により採取された塩素化有機化合物をソックスレー抽出法により抽出する場合、採取用フイルター7に含まれる極細炭素系繊維の量が上述の範囲に設定されていると抽出に要する時間は通常16時間程度であるが、含有量が4.0〜6.0g程度になると、その数倍の時間(例えば2倍から6倍程度の時間)が必要になる場合がある。
【0039】このような第1の形態に係る採取用フイルター7は、通常、上述の極細炭素系繊維および必要に応じて他の材料をバインダーと共に混合し、これにより得られた混合物を所定の筒状形状に成形すると得られる。なお、バインダーとしては、例えば、セルロース系バインダーを用いることができる。
【0040】(第2の形態)この形態の採取用フイルター7は、極細炭素系繊維と、当該極細炭素系繊維以外の他の炭素材とを含んでいる。ここで用いられる極細炭素系繊維は、上述の第1の形態で用いられるものと同様のものである。この極細炭素系繊維は、2種以上のものが併用されてもよい。一方、ここで用いられる炭素材は、極細炭素系繊維と同様に、ポリアクリロニトリル樹脂、フェノール樹脂またはレーヨンなどの合成樹脂、ピッチ若しくはタールなどの公知の各種の炭素前駆体を焼成して炭素化したもの、或いは賦活して活性を持たせたもの等であり、特に種類が限定されるものではない。また、その形態は、繊維状であってもよいし、粒子状であってもよい。すなわち、この炭素材は、例えば、炭素繊維、活性炭素繊維、活性炭、炭素粒等である。なお、炭素材として繊維状のものを用いる場合、その平均繊維径は、上述の極細炭素系繊維と重複しない範囲、すなわち10μmを超える範囲である。上述のような炭素材は、2種以上のものが併用されてもよい。
【0041】この形態の採取用フイルター7で用いられる上述の極細炭素系繊維と炭素材とは、両者を一体として見た場合、すなわち総体としての平均比表面積が1〜2,000m2/gのものが好ましく、10〜1,000m2/gのものがより好ましい。平均比表面積が1m2/g未満の場合は、気体試料中に含まれる塩素化有機化合物(特にガス状態の塩素化有機化合物)が採取用フイルター7に吸着されにくくなり、気体試料中に含まれる塩素化有機化合物を捕捉して気体試料から取り除くことができない場合がある。逆に、平均比表面積が2,000m2/gを超える場合は、採取用フイルター7に対する塩素化有機化合物の吸着性が強まり過ぎ、後述する分析操作において、採取用フイルター7により捕捉された塩素化有機化合物を短時間で効率的に抽出するのが困難になるおそれがある。
【0042】なお、上述の平均比表面積は、例えば、常圧下の液体窒素の沸点における吸着側の窒素ガス吸着等温線に基づいて測定する公知の方法(B.E.T−B.J.H.法)に従って求めることができる値である。
【0043】上述のような極細炭素系繊維および炭素材を含む成形体からなる採取用フイルター7は、空隙率が上述の第1の形態の場合と同様、80%以上100%未満、好ましくは90%以上100%未満に設定されている。空隙率が80%未満の場合は、第1の形態の場合と同様の不具合が生じるおそれがある。
【0044】この採取用フイルター7は、上述のような極細炭素系繊維および炭素材の他に、他の材料を含んでいてもよい。但し、他の材料としては、例えば、ガラス繊維、シリカ繊維、セルロース繊維等の塩素化有機化合物と反応し難い無機質繊維を用いるのが好ましい。
【0045】上述の極細炭素系繊維および炭素材は、採取用フイルター7において、通常、合計で0.01〜3.0g含まれているのが好ましく、合計で0.1〜3.0g含まれているのがより好ましい。極細炭素系繊維と炭素材との合計の含有量が0.01g未満の場合は、気体試料中に含まれるガス状態および粒子状態の両方の塩素化有機化合物を同時に捕捉して採取するのが困難になるおそれがある。逆に、3.0gを超える場合は、後述する分析操作において、採取用フイルター7により捕捉された塩素化有機化合物を短時間で効率的に抽出するのが困難になるおそれがある。
【0046】このような第2の形態に係る採取用フイルター7は、通常、上述の極細炭素系繊維、炭素材および必要に応じて他の材料をバインダーと共に混合し、これにより得られた混合物を所定の筒状形状に成形すると得られる。なお、バインダーとしては、例えば、セルロース系バインダーを用いることができる。
【0047】(第3の形態)この形態の採取用フイルター7は、炭素材と極細繊維とを含んでいる。ここで用いられる炭素材は、第2の形態で用いられる炭素材と同様のもの、すなわち、ポリアクリロニトリル樹脂、フェノール樹脂またはレーヨンなどの合成樹脂、ピッチ若しくはタールなどの公知の各種の炭素前駆体を焼成して炭素化したもの、或いは賦活して活性を持たせたもの等であり、特に種類が限定されるものではない。また、その形態は、繊維状であってもよいし、粒子状であってもよい。すなわち、この炭素材は、例えば、炭素繊維、活性炭素繊維、活性炭、炭素粒等である。なお、炭素材として繊維状のものを用いる場合、その平均繊維径は、後述する極細繊維の平均繊維径と重複しない範囲、すなわち10μmを超える範囲が好ましい。このような炭素材は、2種以上のものが併用されてもよい。
【0048】この形態の採取用フイルター7で用いられる炭素材は、比表面積が1〜2,000m2/gのものが好ましく、10〜1,000m2/gのものがより好ましい。比表面積が1m2/g未満の場合は、気体試料中に含まれる塩素化有機化合物(特にガス状態の塩素化有機化合物)が採取用フイルター7に吸着されにくくなり、気体試料中に含まれる塩素化有機化合物を捕捉して気体試料から取り除くことができない場合がある。逆に、比表面積が2,000m2/gを超える場合は、採取用フイルター7に対する塩素化有機化合物の吸着性が強まり過ぎ、後述する分析操作において、採取用フイルター7により捕捉された塩素化有機化合物を短時間で効率的に抽出するのが困難になるおそれがある。
【0049】なお、上述の比表面積は、例えば、常圧下の液体窒素の沸点における吸着側の窒素ガス吸着等温線に基づいて測定する公知の方法(B.E.T−B.J.H.法)に従って求めることができる値である。
【0050】一方、ここで用いられる極細繊維は、炭素材以外の材料からなるものであり、例えば、ガラス繊維、シリカ繊維およびセルロース繊維からなる群から選ばれた少なくとも1種のものである。但し、この極細繊維は、平均繊維径が10μm以下(好ましくは7μm以下)、例えば、0.1〜10μm(好ましくは1〜7μm)のものである。平均繊維径が10μmを超える場合は、気体試料中に含まれる粒子状態の塩素化有機化合物を捕捉して採取するのが困難になる場合がある。因みに、この極細繊維の平均アスペクト比(残存平均アスペクト比)は、通常、10,000以下が好ましい。
【0051】この形態の採取用フイルター7は、第1の形態および第2の形態に係る採取用フイルター7と同様に、空隙率が80%以上100%未満、好ましくは90%以上100%未満に設定されている。空隙率が80%未満の場合は、後述する分析操作において、採取用フイルター7により捕捉された塩素化有機化合物を短時間で効率的に抽出するのが困難になるおそれがある。
【0052】この形態の採取用フイルター7は、上述のような炭素材および極細繊維の他に、他の材料を含んでいてもよい。但し、他の材料としては、例えば、ガラス繊維、シリカ繊維、セルロース繊維等の塩素化有機化合物と反応し難い無機質繊維を用いるのが好ましい。
【0053】この形態の採取用フイルター7において、炭素材は、通常、0.01〜3.0g含まれているのが好ましく、0.1〜3.0g含まれているのがより好ましい。炭素材の含有量が0.01g未満の場合は、気体試料中に含まれるガス状態および粒子状態の両方の塩素化有機化合物を同時に捕捉して採取するのが困難になるおそれがある。逆に、3.0gを超える場合は、後述する分析操作において、採取用フイルター7により捕捉された塩素化有機化合物を短時間で効率的に抽出するのが困難になるおそれがある。
【0054】このような採取用フイルター7は、通常、上述の炭素材、極細繊維および必要に応じて他の材料をバインダーと共に混合し、これにより得られた混合物を所定の筒状形状に成形すると得られる。なお、バインダーとしては、例えば、セルロース系バインダーを用いることができる。
【0055】次に、上述の採取装置1の使用方法、すなわち、上述の採取装置1を用いた塩素化有機化合物の採取方法について説明する。ここでは、廃棄物を焼却処理するための焼却施設の空間内、例えば煙道内を流れる排気ガス中に含まれるダイオキシン類などの塩素化有機化合物を分析するための気体試料を採取する場合について説明する。この場合、図1に示すように、採取装置1の採取管2の先端部を煙道25に設けられた試料採取口25aから煙道25内に挿入する。この際、採取管2にパッキン26を装着し、採取管2と試料採取口25aとの隙間を気密に封止する。また、採取器3の分岐路12b内に温度計や熱電対などの測温器27を装着する。
【0056】この状態で吸引ポンプ21を作動させると、煙道25内を流れる排気ガスの一部が気体試料として採取装置1に向けて等速吸引され、採取管2内に流れ込む。採取管2内に流れ込んだ排気ガスは、冷却器5により冷却され、通常、ダイオキシン類の生成温度以下、例えば120℃前後の温度に冷却される。これにより、採取管2内では、ダイオキシン類の新たな発生が防止される。
【0057】このようにして冷却された排気ガスは、採取管2から採取器3の導入管8を経由して採取用フイルター7内に流入する。採取用フイルター7内に流入した排気ガスは、図3に矢印で示すように、採取用フイルター7を通過してホルダー6の本体部10内に流出し、さらに排出路12aを経由して吸引器4に向けて流れる。この際、排気ガス中に含まれる各種の煤塵や粒子状態およびガス状態の塩素化有機化合物は、採取用フイルター7に含まれる極細炭素系繊維、炭素材および極細繊維等により同時に捕捉され、排気ガス中から採取される。この結果、排気ガスは、そこに含まれる煤塵並びに粒子状態およびガス状態の塩素化有機化合物が採取用フイルター7により取り除かれ、排出路12aから吸引器4に向けて流れる。排出路12aを流れる排気ガス温度は、分岐路12bに装着された測温器27により測定され、管理される。
【0058】排出路12aから排出された排気ガスは、排気流路20内に流れ込み、その冷却器23により再び冷却される。これにより、排気ガス中に含まれる水分が凝縮し、トラップ24内に貯留される。このようにして水分が取り除かれた排気ガスは、吸引ポンプ21から外部に排出される。なお、このような採取装置1による気体試料、すなわち排気ガスの採取は、通常、塩素化有機化合物の検出限界値から想定される排気ガス量に相当する時間(通常、排気ガス1〜3Nm3/3〜4時間)実施される。
【0059】このようにして採取された排気ガス中に含まれる塩素化有機化合物濃度を分析する場合は、煙道25から採取装置1を取り外し、また、採取装置1から採取器3を分離する。さらに、分離された採取器3から、採取用フイルター7を取り出す。
【0060】次に、採取管2、導入管8およびホルダー6内を溶媒を用いて洗浄し、その際の洗浄液を確保する。また、採取器3の採取用フイルター7により捕捉された塩素化有機化合物を溶媒で抽出する。ここで、採取用フイルター7からの塩素化有機化合物の抽出操作は、例えば通常のソックスレー抽出器を用いて実施することができるが、この採取用フイルター7は、上述のような小型サイズに設定されているため、高速抽出器のセル内に収容することができ、当該高速抽出器を用いて速やかに抽出操作を実施することができる。しかも、当該採取用フイルター7は、上述のいずれの形態の場合であっても空隙率が上述の範囲に設定されており、また、そこに含まれる極細炭素系繊維や炭素材の量が上述のような一定の範囲に設定されているため、抽出時間を短縮するための特殊な抽出条件を設定する必要がなく、捕捉した塩素化有機化合物を短時間で速やかに溶媒中に溶出させることができる。
【0061】塩素化有機化合物を分析する際は、上述の洗浄液および上述のような抽出操作により得られた抽出液を合せ、これに対して分析操作を実施する。この場合の分析方法としては、例えば、厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課編「廃棄物処理におけるダイオキシン類標準測定分析マニュアル」(平成9年3月:財団法人廃棄物研究財団発行)に記載された方法に従い、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS法)を採用することができる。
【0062】採取装置1を用いて別の気体試料を採取する場合は、例えば、採取器3を新たなものに交換する。この場合、採取装置1は、採取管2のみを十分に洗浄するだけで次の気体試料採取用に供することができるので、気体試料採取前の準備作業が従来のものに比べて格段に軽減され、気体試料採取に要する時間を大幅に短縮することができる。また、この採取装置1は、従来の複雑な採取装置に比べて構成が簡素であるため、取扱いや持ち運びが容易である。
【0063】なお、一度使用された採取器3は、ホルダー6と導入管8とを十分に洗浄し、採取用フイルター7を新たなものに取り替えると、繰返して再利用することができる。
【0064】[他の実施の形態]
(1)上述の実施の形態では、採取用フイルター7として多孔質の筒状のものを用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、採取用フイルター7が多孔質の円柱状や多孔質の円盤状に形成されている場合も本発明を同様に実施することができる。
【0065】(2)上述の実施の形態では、廃棄物の焼却炉から排出される排気ガス中に含まれるダイオキシン類などの塩素化有機化合物を採取する場合について説明したが、本発明の採取器は、排気ガス以外の流体中に含まれる塩素化有機化合物を採取する場合にも同様に利用することができる。例えば、環境大気中に含まれる塩素化有機化合物、並びに工場廃水、海水、淡水および水道水等の水中に含まれる塩素化有機化合物を採取する場合についても本発明の採取器を同様に利用することができる。
【0066】なお、工場廃水等の水中に含まれる塩素化有機化合物を採取する場合、採取試料は液体試料となる。この場合、当該液体試料は、粒子状態、気泡状態(すなわち気液混合状態)および溶解状態(すなわち液中に溶解した状態)の各種の状態の塩素化有機化合物を含む可能性があるが、採取用フイルター7は、このような各種の状態の塩素化有機化合物を同時に捕捉して液体試料中から採取することができる。
【0067】
【実施例】実施例1平均繊維径が20μmのガラス繊維と、比表面積が10m2/gでありかつ平均繊維径が3μmの極細炭素繊維とを混合し、これにセルロース系バインダーを加えて筒状に成型した。これにより、極細炭素繊維を2.8g含みかつ空隙率が95%に設定された、開口端側の外径が19mm、閉鎖端側の外径が18mm、厚さが5mmおよび長さが100mmの上述の第1の形態に係る採取用フイルターを得た。この採取用フイルターを用いて上述の実施の形態に係る採取器3を作成し、さらにこの採取器3を用いて上述の実施の形態に係る採取装置1を構成した。
【0068】この採取装置1を用い、廃棄物を焼却処理中の焼却施設の煙道から気体試料、すなわち排気ガスを採取し、そこから採取された塩素化有機化合物を定量分析した。この際、排気ガスの採取および塩素化有機化合物の定量分析は、上述の「廃棄物処理におけるダイオキシン類標準測定分析マニュアル」に規定された方法に準じて実施した。塩素化有機化合物(ダイオキシン類)の定量分析結果は、同じ煙道から上述の「廃棄物処理におけるダイオキシン類標準測定分析マニュアル」に規定された従来の採取装置を用いて採取された塩素化有機化合物の定量分析結果と略一致した。これより、この実施例の採取器は、排気ガス中に含まれる塩素化有機化合物を従来の採取装置と同様に採取できることが確認できた。
【0069】実施例2平均繊維径が20μmのガラス繊維、比表面積が10m2/gでありかつ平均繊維径が5μmの極細炭素繊維および比表面積が1,000m2/gでありかつ平均繊維径が15μmの活性炭素繊維を混合し、これにセルロース系バインダーを加えて筒状に成型した。これにより、極細炭素繊維と活性炭素繊維とを合計で2.5g含みかつ空隙率が95%に設定された、実施例1のものと同じ大きさの上述の第2の形態に係る採取用フイルターを得た。なお、この採取用フイルターにおいて、極細炭素繊維と活性炭素繊維との平均比表面積は、100m2/gであった。
【0070】この採取用フイルターを用いて上述の実施の形態に係る採取器3を作成し、さらにこの採取器3を用いて上述の実施の形態に係る採取装置1を構成した。そして、この採取装置1を用い、実施例1の場合と同様にして廃棄物を焼却処理中の焼却施設の煙道から排気ガスを採取し、そこから採取された塩素化有機化合物を定量分析した。塩素化有機化合物(ダイオキシン類)の定量分析結果は、実施例1の場合と同じく従来の採取装置を用いて採取された塩素化有機化合物の定量分析結果と略一致した。これより、この実施例の採取器は、排気ガス中に含まれる塩素化有機化合物を従来の採取装置と同様に採取できることが確認できた。
【0071】実施例3比表面積が500m2/gでありかつ平均繊維径が20μmの炭素繊維と、平均繊維径が3μmのガラス繊維とを混合し、これにセルロース系バインダーを加えて筒状に成型した。これにより、炭素繊維を0.15g含みかつ空隙率が95%に設定された、実施例1のものと同じ大きさの上述の第3の形態に係る採取用フイルターを得た。
【0072】この採取用フイルターを用いて上述の実施の形態に係る採取器3を作成し、さらにこの採取器3を用いて上述の実施の形態に係る採取装置1を構成した。そして、この採取装置1を用い、実施例1の場合と同様にして廃棄物を焼却処理中の焼却施設の煙道から排気ガスを採取し、そこから採取された塩素化有機化合物を定量分析した。塩素化有機化合物(ダイオキシン類)の定量分析結果は、実施例1の場合と同じく従来の採取装置を用いて採取された塩素化有機化合物の定量分析結果と略一致した。これより、この実施例の採取器は、排気ガス中に含まれる塩素化有機化合物を従来の採取装置と同様に採取できることが確認できた。
【0073】比較例1炭素繊維として比表面積が3,000m2/gでありかつ平均繊維径が15μmのものを用いた点を除いて実施例3と同様の採取用フイルターを作成し、これを用いて実施例3の場合と同様に排気ガス中に含まれる塩素化有機化合物の定量分析を実施したところ、従来の採取装置を用いて採取された塩素化有機化合物の定量分析結果よりも小さな値が得られた。これは、炭素繊維の比表面積が大きいため、採取用フイルターにより採取された塩素化有機化合物が抽出されにくかったことに起因するものと推察される。
【0074】比較例2炭素繊維の含有量を0.005gに変更した点を除いて実施例3と同様の採取用フイルターを作成し、これを用いて実施例3の場合と同様に塩素化有機化合物の定量分析を実施したところ、従来の採取装置を用いて採取された塩素化有機化合物の定量分析結果よりも小さな値が得られた。これは、炭素繊維の含有量が少ないため、排気ガス中の塩素化有機化合物、特にガス状態の塩素化有機化合物の一部が採取用フイルターにより採取されなかったことによるものと推察される。
【0075】比較例3炭素繊維の含有量を5.0gに変更した点を除いて実施例3と同様の採取用フイルターを作成し、これを用いて実施例3の場合と同様に塩素化有機化合物の定量分析を実施したところ、従来の採取装置を用いて採取された塩素化有機化合物の定量分析結果よりも小さな値が得られた。これは、炭素繊維の含有量が多すぎるため、採取用フイルターにより採取された塩素化有機化合物が抽出されにくかったことに起因するものと推察される。
【0076】比較例4平均繊維径が3μmのガラス繊維に代えて平均繊維径が30μmのガラス繊維を用いた点を除いて実施例3と同様の採取用フイルターを作成し、これを用いて実施例3の場合と同様に塩素化有機化合物の定量分析を実施したところ、従来の採取装置を用いて採取された塩素化有機化合物の定量分析結果よりも小さな値が得られた。これは、採取用フイルター内に平均繊維径が10μm以下の極細繊維が含まれていないため、塩素化有機化合物、特に粒子状態の塩素化有機化合物の一部が採取用フイルターにより採取されなかったことによるものと推察される。
【0077】比較例5空隙率を75%に変更した点を除いて実施例3と同様の採取用フイルターを作成し、これを用いて実施例3の場合と同様に塩素化有機化合物の定量分析を実施したところ、従来の採取装置を用いて採取された塩素化有機化合物の定量分析結果よりも小さな値が得られた。これは、採取用フイルターの空隙率が80%未満であるため、採取用フイルターにより採取された塩素化有機化合物が抽出されにくかったことに起因するものと推察される。
【0078】
【発明の効果】本発明に係る塩素化有機化合物の採取器は、多孔質のフイルターが上述のような特有の構成を有するため、流体中に含まれる粒子状態およびガス状態の塩素化有機化合物を同時に捕捉して採取することができる。
【0079】また、本発明に係る塩素化有機化合物の採取用フイルターは、上述のような特有の構成を有するため、流体中に含まれる粒子状態およびガス状態の塩素化有機化合物を同時に捕捉して採取することができる。 |
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